craraさんとしゃべっているうちに、
三度笠、被っているように見えて、
あっちの兄弟の段取りして、
こっちの親父の立ち回りして、
肝心の手前のお袋さんには一向に会えず、
「嗚呼、渡世暮らしの因果な身の上、おっかさんはどうして居なさるんだ・・・。」
と、今日も行灯片手に、西・東。
嗚呼、すっかり、トランス入り、
「ごめんなすって」
あっしも草蛙を整えて、
雪ん中、
すり切れた三度笠を捨てて、
iPodという名の行灯で照らしてお暇、いただきやす。
「お?juriちゃん!」
こりゃあ、歌仲間の旦那、昭松兄貴の笠、貸しておくんなせぇ。
言いたかったが、
「juriちゃん、笠もねぇのかい?」
「あっしはこのヤマ終えたら草蛙を脱ぐ身でござんす。荒療治で雪にさらされて行くまででさぁ。」
恋女房も居ない長屋に着いて、
献立も決めぬうちから、瓦版屋K師にもらった寒干大根を湯戻しし、
「さて、寺子屋で採れたセロリで和えモンだ。」
あっしがこんな放蕩だから、倅は会いに来ちゃくれぬ。
袷の一枚も、見立ててやりたい心持ちさねぇ。