art-P capsule

フリーMC。2004年から映画とロックを作っています。ジャンルレスボーカルや表現を生業としている日々を記しています。2004年12月より毎日更新。

かじか荘

rubenjuri2009-11-09

「あいつらの子だ」と言う。
言い切るのだから、尚一層、可愛い。
「だって、同じ模様だ。」
そう考えて、自然だ。
愛おしい。
どっちを。
どっちも。
あいつらの子だと思うと、一層可愛いし、そうだと言い切るこいつも然りだ。


気になる場所で、立ち止まる。
それを、しばしば、見られる。
「藻の暖簾が、あいつの形に、しばらく残る。」



暖簾をくぐると・・・。
かじか荘。


両親とは、今年、二度にわたって見舞われた大雨で、はぐれてしまった。
ここに立ち寄るのは、或る母子。
両方がじっとこちらを見ている時もあれば、ひとりひとりがそうしている時もある。
子が、一旦、通り過ぎ、思い立って、今一度後ずさり、こちらをじっと見、それを、母が、ベランダから遠目に見ている時もある。
母子は、近所の住人から、「あそこに何があるのか」と、しばしば訊ねられる。
母は、自分よりずっと大きくなった子を、遠目に見、大きくなったって、あの頃のままだって、そう、思う。
昼寝から目覚め、自分のところへ一目散に急ぐのに、おもちゃ箱を通りかかると、コンマ1秒、中を確認して、我に返り、また急ぐ。
あの頃のそのままのこいつだって。
そんな風に母子が日々を過ごすこの街の、少し急な坂になった路地にある、かじか荘に、居るんだ。
両親の、かじか荘。
生まれたところ、かじか荘。
いつか、出てくのだけれど。