梅春の若き日、迷宮とは、全て己が導いているのだと解釈した筈で、しかし、気づいたからと言って脱出できるものでもなく、ただ、置く。
突然の父の起立に愕然とする己の傲り。
その言葉を耳にしたくなかったが為に、序章に、誘導で匂わせ顔色を伺っては直後に耳を塞ぐ、そのくり返しをしたのは、誰あろう、己。
いつまでも、そうしていればよい。
愚かな滞る春秋を、川は、容赦なく、繋げていくばかりなのだったら。
流れに融ける風花を 唇に含みて 耳にものこす
珠里
画像:『猫梅』菱田春草