art-P capsule

フリーMC。2004年から映画とロックを作っています。ジャンルレスボーカルや表現を生業としている日々を記しています。2004年12月より毎日更新。

周波数

rubenjuri2015-07-08

「とーとーはママの料理が一番好きらしいな。」
「・・・そんなことをアンタに?・・・うん、そうみたいだけど、それは、たまにしかママの料理を食べないからでしょうね。もう食べる機会もないね。かーさんは、逆に、ちゃーちゃんの紫蘇巻きがとっても好きだよ。」
「紫蘇巻きなん?へぇ。そういえば最近は紫蘇巻きが出んなぁ、ちゃーちゃんち。」
「あら、そう。それとねぇ・・・。」
「ちゃーちゃんのお稲荷さんやろ?」
「そうそう。アレは、世の中の全てのお稲荷さんの中で最高。」
「ママのサンドイッチ、まぁ一生懸命食べとったな、とーとー。」
「ああ、そうだったね、忘れてた。他の夕飯のことはよく憶えてるけどね。そうだったね。そういえば、ママは最近、料理を持たせてくれなくなったね。とーとーのためだったのかなぁ。あの、色々持たせてくれてたの。まぁ、歳とったってのもあるし、味覚が自信なくなったってのも、あるんだろうけどね。孫には高級なものを買い与えたいだろうしね。」



とーとーだけじゃない。ママの料理は、松江の友達が皆、好きで、かーさんが居なくても上がり込んで食べていたよ。友達のお母さんがしばしば「教えてほしい」と頼みに来る。ママが快く教えるも、友達のお母さんはママみたいには出来ないと言う。



かーさんはママを選んで生まれて来た。
ママのルックス。
クールな人柄。
創作センスは知らなかったかもしれないな。
就活の役員面接で「アナタの自慢は?」という問いに、「散文などを書き綴ってきた十数冊ものノートです。」と答えたが、シュミレーションでは「母です」としていた。
何故、咄嗟に変えたのかは解らないし、どちらが印象的に良い回答なのかも解らないが、「ママだ」とカミングアウトするのははばかられたのだろう。



カミングアウト。
近く、かーさんは、カミングアウトしなければならないだろう。
ママにも
誰にも、言っていなかったことを。



『ヲリドル』は、ママとの関係を己の中で折り合わせる為に創っている。
それを表現してメガホンを置ける。
「暗い隅に追いつめられた」あの日には感謝さえしている。
あの日がなければ今日はない。
だからメジャーコードになって歌い続けられるのだ。
とても嬉しい。



『ヲリドル』を発表する前に
姉妹で話しておかなければならないだろう。
可聴周波数を逸脱して



逸脱して



凄まじいが
安堵している



転調するからだ。



生きるとはそれだ。



祈ることととおぼえたり。