「juriさんの販売力って、唯一のものですよね。大きく言えば、接客力。元をただせば、コミュニケーション能力です。いつも、驚かされます。いやぁ、凄いっす。」
しみじみと、ゆっくりと、手を止めて、目を見て、店長が言いました。
「なんすか。なんすか。時々、なんなんすか。」
入院中も、「居ないとおっきさを改めて感じます。早く戻ってきてください。」と、電話で言われました。
「ホメゴロシだ。入院してるのに無意味にコロサレる。」
たまにある、ダブル接客・トリプル接客が果たされると、至福。そうじゃなくても、次に繋がる接客で、一点売りだけを心を込めて。大口買いどころか、会いにいらしただけでも、嬉しい。
ただ、それだけ。
「今朝は続けてふたりも顧客様が来ましたね。ふたり目の紳士は、あの女性居ないなぁって。接客中なのでお待ちくださいって言ったら、待ってる間に一点、お買い上げくださいました。」
「ずっとお目にかかってなくて、それも、すごく忙しい時に、空気を読んで笑顔で通り過ぎられたのが最後だったから、気になってて、つい先日も思い出してたところだったんです。さっき訊いたら、奥様が入院されていて、先日亡くなられたとかで。どおりでお痩せになったなぁって。7キロお痩せになったんですって。」
それでも変わらずオシャレ。何度か此処で紹介している殿方です。
四十九日はそろそろで、その後も、あとさきを色々されて、しばらくはバタバタされても、ふと、ポッカリ穴があいた感じになった時、寂しさが一気に溢れたりするのじゃないかしらん。
一年がとても早く感じるので、そんなには間隔があいてないような気がしていましたが、通り過ぎられたのは5ヶ月も前なのだそうです。
「とにかく色んな店に配属されましたが、juriさんの販売力は独自のものです。」
「ありがと。いつも自問自答ですよ、20年間。自分のことは一番わかんないから、店長にそう言っていただけると、嬉しいです。ただ、それがいいことなのか、組織の一部としてはどうなのか、そっちも言ってもらわないと。」
「や、いーです！！」
「ありがとうございます。」
自分自身・・・己は、辻褄合わせに・・・翻弄されております。
ただ、本当に本当に、嬉しいです。
